人文社会科学部4年の須田勝喜さんが司法書士試験に合格しました。司法書士は難関資格で、少なくとも近年で本学では合格者の例がないようです。今回、茨大広報学生プロジェクトの舘野湧太さん(人社2年)がインタビューに臨み、須田さんが司法書士を志したきっかけや勉強で大変だったこと、これからの展望などについてお話を聞きました。
―まずは司法書士についての簡単なご説明をお願いします。
須田「日本には登記という制度があります。例えば不動産を買ったり売ったりしたその記録を国に残すような仕組みです。日常的な取引や契約にも関わってくるものですけど、知識がない人や初めて見るような人からすればとても難しい内容なんです。それを代理して円滑に行うのが司法書士ですね。」
※司法書士...専門的な法律の知識に基づき、登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家。国民の権利を擁護し、自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする国家資格。民間取引における契約書の作成や、簡易裁判所における民事訴訟などにおいて当事者を代理する業務も行う。
―法律の面から人々の生活を手助けするということでしょうか?
須田「はい、弁護士が法廷でバチバチに戦っているイメージとは違って、より日常的なことに関わってきます。弁護士と比較するのであれば、法廷で戦う前の予防のような役割を果たします。」
―司法書士についてはどのように知ったのでしょうか?
須田「法律に興味をもったのは中学生の頃です。当初は検察官になりたいとも考えていました。きっかけは、テレビで観た「袴田事件」のドキュメンタリー番組です。そこから、法律が人の生活や人生にどんな影響を与えるのか実感して、「こんな風に困っている人がいるのか」、「自分も法律家としてこういったものをなくしたい」と考えるようになりました。
そうはいっても、(検察官や弁護士になるための)司法試験さすがに難関です。少しずつ段階を下げて、自分に身近な資格から取ることにしました。それで大学2年のときに行政書士の資格を取得して、現在の司法書士にステップを上げていったという感じです。」
※袴田事件...1966年(昭和41年)6月30日に静岡県清水市(現?静岡市清水区)で発生した強盗殺人放火事件。逮捕され、死刑判決を受けた袴田氏については、その後警察による過酷な取り調べや自白の強要に伴う冤罪の可能性があり、静岡地裁の再審開始決定により釈放された。
―勉強ではどんなところが大変でしたか?
須田「モチベーションを保つことが大変でした。試験前はもう何回も何回も繰り返して問題を解き続けていました。司法書士の勉強は知識があるかどうかということも試されますが、それ以上に実務的な面が強くあります。もちろん実務について学べる事自体が司法書士試験の勉強をする魅力なのですが、最後の方なんかは新しい知識を得るというより、忘れないためにひたすら実務の練習を繰り返すという、ただの作業のような感じでした。精神的にもすごい辛かったですね。
あとは、人生経験とのギャップもありました。社会人だと生活の中で戸籍をとったりという経験があって、その経験から実務的なこともイメージしやすいと思うんですけど、大学生だと戸籍を読むという経験もあまりなく、法律関係の書類に対する理解が大変でした。そのギャップを埋めるために作業をひたすら繰り返して頭に詰め込むしかありませんでした。」
―モチベーションはどう保たれたのですか?
須田「「司法書士になるには学生のうちにひたすら勉強する道しかない」という強い動機が自分を引っ張ってくれました。自分の思いを実現するために避けては通れないとわかっていたので、努力というより執念のようなものがあったんだと思います。
勉強の面白い部分もありました。司法書士資格の試験問題って、冊子で何十ページにもなるんですよ。具体的なケースが示されて、そこから、法律構成はどうなっているのか、どの登記の申請をすればいいのか、自分で考えていくことは楽しかったです。複雑な問題を法律の面から分解する、そんなイメージです。」
―では、合格直後の心境はどうでしたか?
須田「喜びと安堵でしたね。大学生活最後の1年のプレッシャーは大きかったです。そんな中、就活もしないで、今年受かるつもりで勉強に打ち込みました。そのプレッシャーを乗り越えて、ようやく合格できた達成感がありました。何といっても、大学に入るまでだけでなく、大学4年間もずっと受験生でしたからね。大学生活を通しての最大の目標が達成されて本当に良かったです。」