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【著作?制作物紹介】社会連携センター?間中健介講師著「キャリア弱者の成長戦略」

キャリア弱者の成長戦略


Manaka Kensuke間中健介(社会連携センター講師)著


出版社:新潮新書
出版日:2023年6月
ISBN:978-4-10-610999-7
価格:836円(税込)

著者コメント

 政府が推進してきた成長戦略を、個人の就業者の視点に立ち、わかりやすく解説。

 2010年代にわたり3%超の成長率を持続している欧米主要国と1%未満の成長率に留まる日本との成長格差拡大に過度な悲観論が示されているが、日本経済もまた成長率向上のために健闘をしてきた事実を紹介しつつ、健全な危機意識の醸成と、解決への行動案を提示することに取り組んだ。

 主張の中心は「個人のリスクの増大」と「個人の企業化」。国の財政検証や賃金構造基本統計調査等のデータをもとに、公的社会保障の縮減(ダウンサイジング)の可能性と、1990年代以降の実質賃金の伸び悩みの状況とその背景を解説。加えて、産業界で進むコーポレートガバナンス改革をはじめとする経営?事業構造改革のもと、長期雇用者の役員登用や幹部職への昇進(出世)が難しくなっている状況を紹介。2023年度春闘では平均3.7%の大幅な賃上げが見られているが、長期的傾向では労働の価値が減少していることがうかがえることに加え、引退後に受給することのできる公的給付は楽観的な経済予測が持続的に実現しない限りは縮減が避けられない。2010年代後半からの成長戦略は、企業の稼ぐ力の向上に加えて、個人の稼ぐ力の向上への施策が明確に増えた。第四次産業革命、働き方改革、コーポレートガバナンス改革、人的資本投資推進等の諸改革?諸施策は、各々の改革主目的の達成に加えて、個人の資本装備率向上への作用を通して、労働参加率向上、需要創造、生産性向上等への貢献を見込むものでもあった。

 また、成長戦略の諸施策のなかには、個人の裁量を拡大し、チャレンジのハードルを下げるものも少なくない。その効果を活用して起業するなど新たな境地を切り開く個人がいる一方で、多くのビジネスパーソンにとっては改革効果が届いているとは言えず、低成長と長寿社会がもたらす負担増のリスクが高まっている。そして、公的社会保障を取り巻く状況や成長戦略の諸施策が個人に及ぼす影響が増しているにも関わらず、政府による個人向けの政策広報が十分にされているとは言いがたい。

 本書後半では、成長戦略の理解を醸成することを視野にしつつ、新書としての読みやすさを実現するため、キャリアチャレンジのきっかけづくりのための23の戦略を提示している。政府が推進する人的資本投資の趣旨のもと、個人としてのリスキリングに向けた戦略設計や、個人としての資本蓄積の重要性、DXへの具体的な対応、人生100年時代に求められる健康管理手法等を提示している。

監修者プロフィール

間中健介(社会連携センター講師)

専門分野経済政策、経済史。
1975年生まれ。東京都立大学大学院経営学研究科修士課程修了。
米系コンサルティング会社、電通グループ関連会社をへて創薬支援会社の設立に参画。内閣官房日本経済再生総合事務局企画官、内閣官房新しい資本主義実現本部事務局企画官をへて慶應義塾大学大学院特任教員。2023年4月より茨城大学社会連携センター講師。