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2060年の政策担当者になりきって気候変動適応策?緩和策を検討
―水戸市&茨大GLEC&大阪大による「フューチャー?デザイン?ワークショップ」

 未来の市民になりきって現在に必要な気候変動対策を考える―そんなユニークなワークショップが、625日、スタートしました。これから議論を行っていくのは水戸市の約20人の職員のみなさん。この「フューチャー?デザイン?ワークショップ」を水戸市とともに企画したのは、茨城大学地球?地域環境共創機構(GLECと大阪大学大学院工学研究科 原圭史郎教授です。今後計5回にわたって議論が行われます。

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 大阪大学の原教授によると、フューチャー?デザインは、将来世代に持続可能な社会を引き継ぐための「社会の仕組み」をデザインし、実践するものです。そのような有効な仕組みの一つとして、将来世代の視点から現在の意思決定を考察する「仮想将来世代」という方法が提起されており、国内外で様々な研究や実践が行われています(参考:https://www.cfi.eng.osaka-u.ac.jp/fd-research/practices.html)。
 原研究室では、自治体や政府、産業界と連携してさまざまな課題やテーマにこの仕組みを応用し、長期的観点からの意思決定やビジョンづくりを支援するなど、フューチャー?デザインの実践や研究を進めています。今回のワークショップは、この方法を取り入れ、気候変動をテーマに、「2060年に生きる水戸市の政策担当者」の視点から政策の提案や優先順位化を考えるものです。

IMG_5017.JPG フューチャー?デザイン?ワークショップについて説明する大阪大の原教授

 また、茨城大学は、2006年に立ち上げた地球変動適応科学研究機関(ICAS)、その機能を引き継いで2020年に設立した地球?地域環境共創機構(GLEC)を中心に、気候変動の適応策に関する研究を基盤に、国内外での「サステイナビリティ学」の教育?研究、茨城県地域気候変動適応センターの運営などを行ってきました。
 さらに20224月にはカーボンリサイクルエネルギー研究センター(CRERC)を設立し、気候変動の緩和策に関する研究?社会実装も組織的に手がけ、緩和策?適応策の両方にまたがる「総合気候変動科学」の確立と、社会実装に向けた国内外の地域との協働を進めています。

 GLECが運営する「サステイナビリティ学教育プログラム」では、担当の田村誠教授や小寺昭彦講師が中心となって、一部の授業で「フューチャー?デザイン」のアプローチを取り入れています。田村教授は、「現在世代と将来世代との間でのギャップが大きな課題となる気候変動の問題において、将来世代になりきって議論をするというフューチャー?デザインの考え方はきわめて有効です」と語ります。その手応えを踏まえ、地域の気候変動対策における「フューチャー?デザイン」のアプローチの有効性を探るため、田村教授と大阪大学の原教授が水戸市に対して共同研究を提案。それが今回の職員向けワークショップにつながりました。

DSC_5409.JPG 高橋市長(左)と意見交換

 ワークショップの初回に先立ち、田村教授、小寺講師、大阪大学の原教授に、GLECの戸嶋浩明機構長が加わって、高橋靖市長を訪問。今回の取り組みの意義などを語りました。
 フューチャー?デザインの説明を聞いた高橋市長は、水戸市においては運輸部門の二酸化炭素排出量が大きいことにも触れた上で、「技術革新などによってひたすら適応をしていた結果、緩和策が疎かになってはいけない。他方で緩和のためには市民の人たちに我慢や不便をお願いすることになり、今までのやり方だけでは合意形成が難しい。市民を巻き込んでこうした課題について議論できる場を提供できれば」と、期待を示しました。

 ワークショップは、625日の第1回を皮切りに、829日(予定)まで計5回実施される計画です。

DSC_5474.JPG 気候変動に関する諸課題を田村教授が解説

 第1回では、最初に大阪大学の原教授がワークショップの概要を説明。続いてGLECの田村教授が、気候変動の対策には緩和策と適応策があることや、気候変動適応法に基づき茨城大学に設置された茨城県地域気候変動適応センターの取り組み、県の適応計画、水戸市の現況など、議論の前提となる情報についてレクチャーしました。流域治水など水害への適応策、コンパクトシティ化などの視点も盛り込まれており、田村教授は、「2060年頃に水戸市民はどこに住み、どのように生計を立てていくか?それを考えるワークショップにしたい」と呼びかけました。

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 4つのグループはそれぞれ異なる部署の職員たちで構成されており、最初は自己紹介でアイスブレイク。その後は2060年に予想される出来事について考え、特に気候変動に関わるような動きを付箋に書き出し、用意された白紙の「未来年表」に貼りつけていきます。続いて、カーボンニュートラルが達成できていると思うか、ライフスタイルや生業、あるいは都市構造やインフラがどのように変化しているかなどを、グループで考え、2060年の水戸の姿のイメージを固めていきました。

 今後、第2回以降は、引き続き2060年の社会像の描写を進めつつ、通過点となる2030年までに市として実現すべき適応?緩和の提案と、その優先順位化などについて考えていくということです。

 果たして、2060年の政策担当者になりきった水戸市のみなさんはどんな政策を導き出すのでしょうか。これからの真剣な議論が期待されます。本ニュースでも進展をお知らせする予定です。

(取材?構成:茨城大学広報?アウトリーチ支援室)

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