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キャンパスライフの不安を助け合いで解決!ピアサポーター制度

 茨城大学の「ピアサポーター(通称:ピアサポ)制度」をご存じですか?学生生活における不安を学生同士の助け合いで解決しようと目指す取り組みで、2017度にスタートしました。具体的には、聴覚や肢体に障害がある学生や、心に不安を抱える学生が、学生生活を送る上で感じる困難を和らげるための活動をしています。制度を利用する学生(利用者)やピアサポの学生に、感想や活動内容を聞きました。

授業風景.jpg 授業を受ける朝比奈慎一郎さん(右手前)

 「非常に助かっています。絶対にないと困る制度です」と話すのは、理学部3年の朝比奈慎一郎さん。聴覚に障害があり、補聴器と人工内耳を着けて生活しています。さらに、授業を担当する先生は、朝比奈さんが装着する補聴器などに直接音声を届けられる「ロジャーマイク」を使用します。それでも、朝比奈さんが聞き取れる情報は全体の7割程度。ピアサポが授業中の音声情報を専用アプリに打ち込んで利用者に伝える「パソコンテイク」を、全ての授業で利用しています。

テイクの様子.JPG ピアサポが打ち込んだ音声情報(左)が朝比奈さんのタブレット(右奥)に表示される

 朝比奈さんは聾学校から入学しました。茨城大学を選んだ理由は、「好きな数学を学べること」、そして「支援体制があったこと」。ただ、聞こえない人ばかりの環境から聞こえる人ばかりの環境に飛び込んでいくのは、生活や勉強、友人関係などあらゆる面で不安がありました。コロナ禍も重なり、1年生の頃は「正直しんどかったです」と話します。ただ、学年が上がるごとにその不安が溶けていきました。その要因の一つがピアサポです。ピアサポは、勉強面を支える存在ですが、「ピアサポ室に遊びに行って雑談をしたり。友だちに近い関係」でもありました。
 現在は手話サークルの代表を務めたり、オープンキャンパスで同じく聴覚障害がある来場者やその家族に対して自分の体験を伝えたり、「すごく充実しています」と笑顔で話します。

朝比奈さん.jpg

 ピアサポは授業の隙間時間に大学内で業務を担って賃金を得ることができる学生アルバイトの一つです。シフトは、利用者の時間割の中から、都合の良い時間帯を選択できます。
 活動は大きく分けて三つ。
 まず「情報保障」。朝比奈さんが利用するパソコンテイクはここに含まれます。パソコンテイクが主な仕事で、基本的に3人で一つの授業を担当します。タイピングに慣れたり、自分の専攻とは異なる授業に参加したりできます。
 次に「移動支援」。車いすなどを使用する学生の授業間や昼休みの移動を援助します。
 最後に「運営」。共通教育棟1階の「ピアサポ室」で、訪れた人の困りごとの相談を聞いたり、他愛のない話をしたり、一緒にご飯を食べたりします。
 これらの活動には、学内の研修と認定試験を受けると参加できるようになります。

ピアサポ室.JPG ピアサポ室

 現在活躍しているピアサポの皆さんは、何がきっかけで活動を始めたのでしょうか。また、どのような思いで活動しているのでしょうか。4人に、話を聞いてみました。

磯山さん.JPG 磯山小和さん

 教育学部4年の磯山小和さんは、新しいことを始めたり、知らない場所に行ったりすることが得意ではありませんでした。何かできることはないか考えていた時、ピアサポ募集の案内を受け取り、勇気を出して応募してみたそうです。保健室の先生を目指していたこともあり、誰かの役に立ちたい思いもありました。現在は、情報保障を中心に活動。普段は授業が多く、活動が難しいため、長期休暇中の集中講義を中心にシフトに入っています。「ピアサポへの応募は挑戦でしたが、今何とか色々できています。『挑戦』ができるようになりました」と成長を感じています。

齋藤さん.JPG 齋藤愛也乃さん

 移動支援で活躍している教育学部3年の齋藤愛也乃さんは、移動支援の利用者と車いすを押してくれる友人が一緒にいる場合でも、ピアサポによる支援が必要だと感じています。友人に車いすを押してもらう頻度が高いと利用者が心苦しいだろう、と想像するからです。「友人同士、対等な関係でいて欲しい。友人同士が横に並んで、目を見て話せる方が良いじゃないですか」とにこやかに話します。
 利用者との他愛ない話も大切にしています。「スポーツが得意な利用者さんもいました。車いすだからスポーツの話はNGとか、聞こえないから音楽の話はNGとか、障害名でその子を判断したくありません」と信念を語ります。

永島さん.jpg 永島彰人さん

 ピアサポ全体リーダーで人文社会科学部4年の永島彰人さんは、活動を通して「誰もが大学で学修できる、と実感できました。一方、授業に出たいのに出られない人がいることにも気付けるようになりました」と視野の広がりを感じています。「困っている人が周りにいると声を掛けられるようになったし、相手が言いたいことを待てるようになりました」とも言います。

大野さん.JPG 大野明日花さん

 理学部3年大野明日花さんは、「誰かの役に立ってみたい人や交流の幅を広げたい人は、隙間時間でできます」と話します。現在のアクティブメンバーは約50人。学内での学生アルバイトには年間活動日数の上限があるため、シフトを組むのが難しい日もあります。「ピアサポが増えれば、支援の幅が広がります。気軽に応募して、研修を受けてみてください」と呼び掛けました。

「ピ」ワニ.JPG

 同じ大学に通う仲間と助け合いながら、色々な視点や気付きを得られるピアサポ。卒業生の中には、活動をきっかけに進路を選んだ人もいます。ある人は「耳が聞こえない人のための楽器を作りたい」と電機メーカーに、ある人は「車いすに座ったままだと駅のエレベーターのボタンが届かないのを直したい」と鉄道会社に就職しました。

 記事を読んで少しでもピアサポ活動に興味を持った方は、アクセシビリティ支援室に直接お越しいただくか、お電話を。

■共通教育棟1号館西棟109「アクセシビリティ相談窓口」
 平日9時~16時
 ?029‐228-8595

案内.JPG

(取材?構成:茨城大学広報?アウトリーチ支援室)