教育学部の学生の作品がライトノベル新人賞金賞を受賞!
教育学部学校教育教員養成課程教科教育コース国語選修の学生の作品が、第12回集英社ライトノベル新人賞王道部門にて、金賞を受賞しました。ペンネームは「悦田半次」、作品は「魔法少女スクワッド」。今年2月に書籍化もされました。悦田さんに、受賞の喜びやこだわりを聞きました。
「魔法少女スクワッド」あらすじ(集英社ダッシュエックス文庫より引用) 淋代空白(さびしろ?くうはく)はある任務を遂行中の高次生命体?スルーズのミスで死んでしまう。お詫びとして空白の肉体が修復されるまでスルーズの体を借りることになったのだが、その見た目はまるでマスコットのような愛くるしい妖精姿で......。 そんな空白が目を覚まして初めて出会ったのは、学校一の美少女兼問題児である小野寺火怜(おのでら?かれん)だった。彼女に自分の正体は空白だと説明していると突如、侵略異世界人のエテルネルによる襲撃が発生!! 学校中の人間が殺され、二人も危機に陥ってしまう。すると空白の力が目覚め、火怜を魔法少女へと変身させ―!? 炎脚が唸り、双銃が叫び、蛇剣が嗤う。魔法少女ファンタジー、ここに開幕! |
―金賞受賞おめでとうございます。お気持ちはいかがですか。
悦田さん(以下、悦田)「ありがとうございます。別の小説を書いている時に、何気なくメールを開いたら、金賞受賞のメールが来ていて。今までこうした賞は一次選考を通過したことがなかったので、うれしいけれど何か引っ掛かるような、複雑な感じでした。書籍化の打ち合わせのために担当編集さんと顔を合わせる機会があったのですが、その時にようやく実感が湧いてきました」
金賞受賞を知らせるメール画面
―一次選考を通過したことがない、というのは、同賞公式サイトの受賞者コメントや、書籍のあとがきでも語られていましたね。今回、一次を通過後、二次、三次、四次、最終と進み、そして金賞受賞されたわけですが、作品作りにおいて変えた部分や意識した点はあったのでしょうか。
悦田「これまで、新人賞に7度出して、全て一次で落ちていました。以前は、ヒロインを1人、もしくは2人だったのですが、今回の『魔法少女スクワッド』ではヒロインを3人登場させました。1人はまらなくても、他のヒロインにはまってもらえるのではないかと考えました。また、アイデアを続編用に温存するのをやめて、全て出し尽くしてしまおうと意識しました。
以前はキャラクターを書くことが得意で、戦闘シーンが苦手、と自認していたのですが、ある賞に作品を送った際、『キャラが薄い』『戦闘の描写が上手い』とフィードバックされたんです。じゃあキャラクターを今まで以上にちゃんと考えよう、バトルものを書いてみよう、と。それが作品に反映されたのだと思います」
―全ページで戦っていたと言っても過言ではないほど、バトル尽くしの一冊でした。一方で、世界が危機に陥っていることを忘れてしまうくらい、キャラクターが明るく、掛け合いがコミカルだったのが印象的です。
悦田「個人的に魔法少女=ダーク、というイメージがある反面、どんな絶望的な状況も根拠なくひっくり返す、というイメージもあります。エンタメにしたかったので、街が壊れたり、人が亡くなったりしても気にならないように、色々な設定を作りました。ダークな要素がありつつも、ドストレートに、熱い物語が書きたかったんです。
マーベルのアベンジャーズのように、キャプテンアメリカ、アイアンマンなど色々なルーツを持った、一人ひとりが独立したヒーローが、ケンカしながらなんだかんだ世界を救う...みたいな感じです。魔法少女達のデザインモチーフがバラバラなのもそこから来ています。仮面ライダーの影響も大きいです。異形のヒーロー、同族殺し...ヒーローのはずの仮面ライダー同士が戦う作品もあります。完全無欠じゃないというか、仮面ライダーのそういう要素が大好きで、この『魔法少女スクワッド』にも要素の一部を入れました。例えば、火怜は魔力を補給するために敵を食べますが、本来それは怪人の攻撃ですよね。完全無欠のヒーローじゃない、どこかズレというか、フックを作りたいと思いました。
とにかく、好きなものをとことん詰め込みました。悦田半次ってどんな作家?と聞かれた時に『こんな奴です!』と手渡せる、名刺のような作品になりました」
―書籍化に伴い初めて経験したことや、印象深い出来事などを教えてください。
悦田「一番うれしかったのは、自分が考えたキャラクターに絵が付いたことです。イラスト担当のニリツさんのことは、元々存じ上げていました。こんな贅沢なことはありません。メインヒロインの小野寺火怜の元ネタが仮面ライダーであるとは伝えていたのですが、ライダーが身に付けているようなマフラーをデザインに入れてくれたのがとても嬉しかったですね。こちらの想像を超えるようなデザインやイラストを次々に描いてくれて、新しいものが送られて来る度に感激していました。
イラストに合わせてキャラクターや描写を変えるということもしました。例えば、瀬名雪無(せな?せつな、サブヒロイン)。真面目で常識的なキャラクターで、もともと年上の登場人物にはきちんと敬語を使っていたのですが、イラストを見て『こいつ敬語は使わないんじゃないか?』と思い、礼儀正しい態度はそのままに、タメ口に変えました。
あとはビジネスメールのやりとりも初体験でした。失礼がないよう何度も見直して。緊張しました」
―国語選修ということで、元々文学がお好きだったのだと思いますが、大学での学修が執筆活動に活きた部分はありますか。
悦田「小説は小学6年生から書いていて、賞には高校3年から応募していました。国語選修を選んだのは、文学を学び、研究できるからです。芥川龍之介の『地獄変』や遠藤周作の『沈黙』など、授業などで学んだ作品から得た宗教観などの要素を作品に盛り込めたことは、大学の学びが生きた部分だと思います。
今考えると、教育について学べたことも非常に良かったです。子どもとライトノベルは切り離せない存在です。(読書の時間など)マンガはだめだけど、ラノベなら読んでも良いよ、というように。教育実習などで、子どもたちと関わることができたことは、作品を作る上で非常に良い経験でした」
教育学部図書室
―今後の目標を教えてください。
悦田「いつか自分の作品がアニメ化、マンガ化されたらうれしいですが...。生涯現役でいたいです。死ぬ直前まで書いていたい。最後の作品が出来上がってエンターキーを押したら...、いや、あとがきまで書いて死ぬ、が理想です」
(取材?構成:茨城大学広報?アウトリーチ支援室)